2024年1月合同例会

参加者

136名(現地(講師含む):85名、Web配信:44名、録画視聴:7名)
技術交流会参加申込者(75名)

開催日 2024年1月31日(水)
会場  東京国際展示場(ビッグサイト)東6ホール展示場内特設会場「コンバーテックステージ」
講演
  1. 「新開発 超短焦点プロジェクター専用スクリーンが拓く新たな映像体験」
    TVS REGZA株式会社 レーザーディスプレイ先端技術研究所 副所長 大島 宜浩氏
    <要旨(感想)>
     ホームプロジェクターの国内市場はコロナ巣ごもり特需で2023年までは微増、その後は微減であるが、世界的には堅調に推移している。またスマートプロジェクターは世界で大きく成長している。そういった中でTVS REGZAでは設置場所や視聴環境に左右されない超短焦点プロジェクターの研究・開発を行っている。3色レーザー光源を使うプロジェクターに適した特殊なスクリーンの開発に成功し、ハイコントラストを実現した。スクリーンには1)明るさ 2)視野角 3)コントラスト 4)平坦度 5)設置性/可搬性 などが求められる。スクリーンを開発する材料や技術は、『微細加工』『薄膜コーティング』『光学素材』『貼合・接合』といった研究会会員企業が有する得意分野でもあり今後の展開が期待できる。

 

  1. 「マイクロLEDディスプレイ製造トータルソリューションの紹介」
    東レエンジニアリング株式会社 メカトロファインテック事業本部 第一事業部
    営業部 アカウントマネージャー 梅田 英知氏
    <要旨(感想)>
     マイクロLEDは、ディスプレイのサブピクセルを構成するR・G・Bの1つひとつが独立したLEDになっており、“自発光”して映像表示するという仕組み。現在主流の「液晶」や「有機EL」とは全く異なる映像表示方式であり、新しい映像美が期待できる技術である。LEDチップが30mm以下と微細であり、ディスプレイの製造には膨大な数のチップを精密に基盤に配置する技術(マストランスファー)、1チップごとの動作検査を実施する技術、発見された不良チップをリペアする技術(レーザーリペア)の構築が必要とされるとのこと。東レエンジニアリングは、液晶ディスプレイや半導体の製造装置で培った技術をベースに、マイクロ LED ディスプレイを製造する一連の技術を開発しており、製造装置の主流メーカーとして既に多くの採用実績をお持ちである。本講演では動画を使用することによりマイクロLEDの製造プロセスをわかりやすく解説いただき、その技術の精緻さに感銘を覚えた。また、日本の素材メーカーとの協力も得ながら更なる製造プロセスの効率化を目指されており、低コスト化も期待される。最近海外に押され気味な日本において、ハイレベルな最新のモノづくりの力を実感できるご講演であった。

 

  1. 「イマーシブコンテンツ体験に向けたディスプレイ技術」
    NHK放送技術研究所 新機能デバイス研究部 チーフ・リード 博士(工学) 藤崎 好英氏
    <要旨(感想)>
     放送メディアに関わる幅広い技術を90年以上追求している研究所で、現在は、テレビの枠を超えた新しい体験・感動の提供を目指した「イマーシブメディア」、いつでも・どこでも・誰もが必要とするサービスを届けるための「ユニバーサルサービス」、未来のメディアを創造し持続可能な社会にも貢献する「フロンティアサイエンス」を大きな柱に掲げ、研究開発に取り組んでいる。
     家庭のリビングからモビリティの移動空間まで、場所や環境によらず好みのデバイスで臨場感あふれるコンテンツ視聴を目的として本講演で紹介された技術やデバイスは、フレキシブルOLED、没入型VR、大気安定なOLED、量子ドットEL素子、ベゼルレスバックTFTバックプレーン、伸縮するストレッチャッブルディスプレイなどである。NHK放送技術研究所は、ディスプレイメーカーでもなくアカデミアでもなくというポジションの研究所なので、未来志向の面白く興味深い講演であった。

 

11月関西共催例会

参加者

130名(講師含む、現地:89名、Web配信:29名、録画視聴:12名)
*(一社)関西コンバーティングものづくり研究会でのWeb視聴者数は不明です。
研究会別内訳:京都合成樹脂研究会(14名)、(一社)関西コンバーティングものづくり研究会(37名)、機能性フィルム研究会(76名)、講師(3名)
技術交流会参加申込者(75名)

開催日 2023年11月10日(金)
会場  (地独)京都市産業技術研究所 京都リサーチパーク9号館南棟2F会議室
講演

1. 地方独立行政法人 京都市産業技術研究所
主席研究員 高石大吾

「京焼・清水焼からファインセラミックスへ~釉薬も電子セラミックスも機能性フィルム」

<要旨>
 京都は実は、伝統産業から先端産業へと連なるものづくり都市である。陶磁器の表面のガラス質である釉薬は、コーティングフィルムと捉えることでもできる。現代の情報通信社会を支える電子機器、パソコンやスマホなどに必要不可欠な部品である電子セラミックスは、京セラや村田製作所などの製品が有名であるが、シートのような薄いセラミックスを作る技術を高度化させることで開発されたものである。フィルム、コーティングという切り口で、京都の陶磁器およびセラミックス産業と産技研の技術支援事例について講演された。
 釉薬は表面に光沢を与え装飾的に美観を増し、陶磁器製品に高付加価値を付与する。曜変天目茶碗のように国宝となるものもある。産技研では設立以来、現在も京焼・清水焼業界のために新しい釉薬の研究開発を行っているとのことで、伝統は革新の連続であるという言葉を再認識した。また釉薬は、汚れを落ちやすくする、水の染み込みを防ぐ、耐酸性といった化学的耐久性を向上させる、強度の向上などの機能を有する。近年では科学的な知見に基づき、蓄光性タイルの開発など新たな機能性を付与させる取り組みもある。
 一方、京焼・清水焼から発展した京都のセラミックス産業では、時代の産業ニーズに対応するため、様々な成形技術を用いた多品種少量生産が行われてきた。産技研では、ファインセラミックスの成形技術に強みを持っており、シート成形やスッパタリングターゲット材の開発支援などの、地域企業への技術支援事例が紹介された。村田製作所の創業者の書籍に、会社創立当初に京都市工業研究所(旧産技研)へ何度も相談に行ったことが記述してあることが紹介され、長年に亘って地元業界の支援に尽力してきたことの一端が垣間見え、非常に興味深く聞いた。
 最近、京都市産技研では、伝統と先進の融合による新製品開発や新たな京都ブランドの創出にも積極的に取り組んでおり、伝統の陶磁器釉薬技術と先進のセラミックス成形技術を融合させた「ゆうはり」について紹介された。京焼・清水焼の窯元と地元化学メーカーの協業による成果事例であり、産技研がサポートしている研究会活動が技術と人の融合の場として有効に働いた事例と言える。ベンチャー・スタートアップ企業、伝統産業、地域企業、大企業とそれぞれの立場から、公設試の活用についてヒントを得られる講演であった。

 

4. ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社 
取締役パートナー 山本洋介様

「素材・化学産業におけるイノベーション創出」

<要旨>
 日本の素材・化学産業はGDPの1/3超を占める日本の基幹産業である。一方、グローバル企業との収益性を比較すると劣っている。収益力向上のため事業ポートフォリオ転換が肝要だが、M&Aの件数は増えているものの実行金額水準はグローバルで比較すると低い。中長期的なドライバーとなるR&D効率を向上させる手段として、ベンチャー企業投資は日本でも盛り上がりを見せているが、素材・化学分野はベンチャーキャピタル(VC)から敬遠される傾向があり、事業特性を理解する投資家不足が課題となっている。
 VCと大企業における新事業創出活動は共通するところがあり、講演では探索と育成フェーズにおける主な論点についてお話いただいた。(1)VCにおける目利きとは、そのテクノロジー・事業が描こうとしている事業計画のキャッシュフローを定量化することである。事業計画に対しては、「うれしさ」、「技術優位性」、「コスト」と合わせて「結果、世界の何がわかるのか」の検討が重要である。(2)新規事業におけるリスクとは、逃げるものではなく、取れるかマネージできるかを判断するものである。(3)新事業開発の手段として、カーブアウトは事業スピードの向上とコミットメントを高める点で有利な傾向があり、UMIではカーブアウト支援プログラムによるサポートを行っている。
 大企業とベンチャー企業の協業としては、ベンチャーの技術活用と大企業のアセット活用の2類型がある。資本提携を組み合わせるかは、大企業側の案件位置づけにより異なり、3社の協業事例のご紹介があり、今後のさらなる発展が期待される。
 VCの視点や考え方について具体的な実績事例を交えてご紹介いただき大変興味深い講演であった。また、スタートアップの成否は経営者や経営チームのヒトの要素が半分以上あるとのコメントがあり、山本さんの鋭い眼光から人に対する目利き力のすごさを感じることができた。

 

*講演②および③については、(一社)関西コンバーティングものづくり研究会企画の講演のため、掲載しておりません。

 

 

参加者 216名(講師5名含む、現地(96名)、Web配信(103名)、録画視聴(17名)、技術交流会参加申込者(74名)
開催日 2023年10月03日(火)
会場 タワーホール船堀 小ホール 
講演

1.「溶剤系アクリル粘着剤の基礎とこれからの環境対応に向けて」

綜研化学株式会社 研究開発本部 製品開発部製品開発1グループ 
グループ長 川嶋 徹氏
<講演のポイント>
 粘着剤は、有機溶剤に溶解した溶剤型、水に分散させたエマルジョン型、無溶剤の固形型に大別される。溶剤型粘着剤は、火災の危険性、大気汚染や作業環境面で問題視されているが、設計の自由度が高く、要求性能が出しやすいことから広汎に使用されている。本講演では、溶剤型粘着剤の基礎および溶剤型粘着剤に取り巻く環境課題を説明し、溶剤型粘着剤、特にアクリル系粘着剤の環境対応(環境負荷の低減対応)について報告していただいた。

 

2. 「アクリルエマルション系粘着剤の更なる環境対応」
サイデン化学株式会社 研究第4グループ グループ長 
主席研究員 石本 憲一郎氏

<講演のポイント>
 水系粘着剤の更なる環境対応を目指してサイデン化学では、粘着剤の必須成分であるタッキファイヤーのEm化を乳化重合と同時に行う手法を採用している。この手法を用いることにより、「有機溶剤・エネルギー」のトータル使用量を大幅に削減する事が可能となっている。本講演では実際の導入事例を説明するとともに、近年開発が進められているバイオマス粘着剤についても、開発事例の紹介をいただいた。

 

3. 「環境配慮型粘着ラベルへの取組み」 
リンテック株式会社 研究開発本部 研究所 製品研究部 副部長 鉄本 卓也氏

<講演のポイント>
 昨今、環境配慮の意識が高まっており、多くの業界でその対応が取られている。当社としても、環境負荷低減を指向した製品の開発に力を注いでおり、設計段階からLCA*を参考に資源採取・原材料調達から製造過程、廃棄までを含めた環境負荷低減に努めている。粘着ラベルにおいて、『無溶剤化』、『バイオマス化』、『脱プラスチック化』などのキーワードと共に、身近な粘着ラベルに関して、当社の環境配慮の取り組みを紹介いただいた。

 

4. 「接着性と易解体性を両立した粘接着材料とその工法」
DIC株式会社 加工技術本部 加工技術本部長付・マネジャー 山川 大輔氏

<講演のポイント>
 粘着テープは、電子機器や自動車などで各種部材を間便に固定でき、かつリサイクルしやすい接着材料として古くから利用されております。DICではサステナブルな循環型社会実現に貢献する、工業用途向けのリサイクル対応粘着テープ開発に取り組んでおります。本講演では、特に、リペア・リサイクルを効率的にできる「易解体性」粘着テープ、また離型紙などの廃棄物を削減できる「塗る」粘着テープについてご説明いただいた。

 

5. 「粘着・剥離現象の科学と工学」
東京大学大学院 農学生命科学研究科 生物材料科学専攻
生物素材科学研究室 准教授 山口 哲生氏

<講演のポイント>
 粘着・剥離は、物体間の界面で生じる相互作用をきっかけに、様々なことが関与する、複雑な現象です。今回のお話では、粘着・剥離現象の基本から現象解明のための解析事例の紹介に至る、広範な内容を、コンパクトかつ平易にお話しいただいた。

 

6. 矢野経シリーズ「ラベル台紙リサイクルの動向」

9月例会

参加者 144名(現地参加:56名、Web配信:68名、ビデオ配信:20名)、技術交流会参加者:42名
開催日 2023年9月14日(木)
会場 タワーホール船堀 小ホール 
講演

1.「光メタマテリアルとその応用」

国立研究開発法人 理化学研究所 光量子工学研究センター フォトン操作機能研究チーム・チームリーダー 開拓研究本部 田中メタマテリアル研究室・主任研究員 田中 拓男氏

<要旨>

 日常にある現象を例に出して、理解しやすい説明となっている。

 電磁波(光)は文字通り電場と磁場の波という話から、誘電率と透磁率によって屈折率を導き出せる。我々が光をコントロールするには屈折率を巧みに扱ってきた。光の周波数では透磁率が異なる物質が自然界にはなく誘電率が異なる物質しかない中、メタマテリアルによって世の中にない異なる透磁率を持つ物質を人工的に作り出して光をコントロールしよう、と始まった。

 メタマテリアルの動作原理の説明では、磁石につかない銅がコイル形状にして電気を流すと電磁石になる現象から説明される。電気が通るものをリング構造にして磁場を加えるとリングに円電流が流れその周囲に磁場が作り出され光の磁場と相互作用で透磁率が変わる。より大きな透磁率の変化のためには、リングに切れ目を入れることでコンデンサの役割となり共振周波数が発生、共振周波数を光の波長に合わせてコントロールすることで強い共振現象が発生する。このリングを光の波長より小さく作ることで、構造そのものは光には見えず影響だけを与えるメタマテリアルとなる。

 メタマテリアルの応用として、平面で黒を作り出す「光吸収体」の構造説明と、さらにメタマテリアルの大きさを変えることで共振周波数が変わり白色光を違う色で反射させることができることを説明した。工業的な活用事例として赤外分光法の高感度化の事例の解説があった。メタマテリアルによるフィルム状の軽量レンズ、太陽光をメタマテリアルで吸収と反射させる周波数をコントロールすると放射冷却の様に電気を使わないクーラーになるフィルムが紹介された。

2.「ソフトバンクの描く6Gネットワーク像」 

ソフトバンク株式会社 先端技術研究所 先端HAPS研究室 室長 中島 潤一氏

<要旨>

 移動体通信網の社会インフラ化が進む中、ソフトバンクでは2021年から先端技術研究所を立ち上げ、Beyond5G/6Gに向け12の重要課題を選び挑戦を始めている。
 その一つ「エリアの拡張」として成層圏を飛ぶ基地局「HAPS」がある。これは将来ドローンや空飛ぶ自動車など地上だけでなく上空も含めたエリア構築に有用であり、過疎地や海上なども通信圏内となる。
 実際にHAPSを飛ばし実現するには、軽量な素材として「フィルム」が必須であるが、低温(マイナス70℃)で紫外線が容赦なく当たる過酷な環境で、しかも常時はためく状態になり、耐久性に課題がある。
 実験風景なども紹介し高機能フィルムの支えるBeyond5G/6Gとの関係性を説明した。また、増加の一途をたどるモバイルのトラフィックに対応するために、「周波数の拡張」としてテラヘルツ波の利用も研究している。これまでテラヘルツ領域は光に近い領域とされてきたが、通信用周波数帯として国際的に割り振られ、広い帯域を利用できる可能性があることが紹介された。5Gに比べても桁違いの帯域を使えるようになるが、その活用方法は今では想像もできないものと期待されている。研究の内容として、屋内でのテラヘルツ波の活用の検証、屋外では300GHzが実際にどの程度飛ぶか、結構飛ぶことを実証したことが紹介された。

3.「ウェルビーング経営~社員と社会を幸せにする経営とは?!」EVOL株式会社 代表取締役CEO/ 慶應義塾大学大学院 システムデザインマネジメント研究科付属システムデザインマネジメント研究所 研究員/ 一般社団法人ウェルビーングデザイン 理事 前野 マドカ氏

<要旨>

なぜ今ウェルビーングなのか?

 トヨタ自動車豊田会長等、会社のトップが『幸せ・幸福』を使う時代になっている。それは、ウェルビーングを高めることが、中長期的な企業価値向上につながることからである。ウェルビーング=幸福学の科学は、予防医学とも似ており、幸せについても知識を得て、診断を受け、気を付けることが大事である。また、幸せには地位財(金/物/地位等)と非地位財(安心/心/健康等)がある。非地位財は長続きするものであり、その非地位財型の幸せには、以下の4つの心的因子がある。

やってみよう(自己実現と成長)、ありがとう(つながりと感謝)、なんとかなる(前向きと楽観)、ありのままに(独立と自分らしさ)

 その中で、特に覚えてほしいのが、”生きがい”と”つながり”であり、生き生きと働ける自分になるためには、どんな自分でありたいかを常に意識し続けることが大切である。

2023年度第22回定期総会&6月例会


 
参加者 144名(現地参加:64名、Web配信:66名、ビデオ配信:14名)、技術交流会参加者:47名
開催日 2023年6月7日(水)
会場 タワーホール船堀 小ホール 
第22回定期総会

以下の議案についてすべて承認されました。
1) 1 号議案 2022年度(2022 年 4 月 1 日〜2023 年 3 月 31 日)事業報告
2) 2 号議案 2022 年度事業収支報告、審議
3) 3 号議案 2023 年度下記事業計画に関する審議
① 活動方針(年次テーマ、重点課題) ② 活動計画 ③ 運営予算
4) 4 号議案 会則改定に関する審議

講演

「実験室のデジタル化:その現状と展望」
東京大学 大学院理学系研究科化学専攻 教授/ 東京工業大学 物質理工学院 特任教授 一杉 太郎 氏
<要旨>
 マテリアル研究開発の進め方に大きな変革が起きている。機械学習とロボット技術の発展により、コンピュータが状況を判断し、次の実験を決定する『自律化』が可能となってきた。
 本講演では、『自律化』と『データ』を活用したマテリアル研究のあり方を議論した。研究者・技術者が五感で得た経験、勘、コツを機械に学習させ、実験をロボットに任すことにより、マテリアル探索範囲を飛躍的に広げることができる。さらに、そのようにして得た膨大なデータを研究者が知識として共有し、そこから新しい発想を生んで創造的な仕事に取り組む将来像が提案された。全体をシステムとして捉えるためのチーム作りも重要で、複数社との取組事例を説明した。
 DXがなかなか進まない機能性フィルム業界について、課題設定の仕方や成功事例を作るコツについてのアドバイスがあった。自身の研究ラボの見学会を随時開催しているので、一事例として、より多くの企業に見学いただきたいと紹介された。

4月例会

参加者 167名(現地参加:63名、Web配信:88名、ビデオ配信:16名)、技術交流会参加者:43名
開催日 2023年4月13日(木)
会場 タワーホール船堀 小ホール 
講演

1.「当社のポリエーテル系素材と電池用高機能性フィルムへの応用開発と半固体電池への展開」
株式会社 大阪ソーダ  事業開発本部 イノベーションセンター  主席 松尾 孝氏
<要旨>
 基礎化学品から機能化学品、さらにヘルスケア分野へ事業領域を拡大し、そこで培われた特殊ゴム事業のポリマー設計技術と重合技術をもとに電池用途の「Si系材料への適用を目指した水系バインダー」や「イオン伝導性ポリマー」の開発に取り組んでいる。

 イオン伝導性ポリマーは熱やUVによる架橋が可能であり、機械的特性が良く薄膜やゲルが容易に作成でき、汎用溶媒にも可溶なため加工特性も良い。

 これらの電池部材活用例として、①Li塩混合し架橋した固体ポリマー電解質(SPE)、②Li電解液混合し架橋したポリマーゲル電解質がある。

①固体ポリマー電解質(SPE)はイオン伝導性ポリマーの特徴を生かしつつ架橋することでフィルム化することも可能で強靭性、柔軟性の制御が可能であり、電池の膨張収縮に追随もできる。実際に作成したポリマー電池に固体電解質フィルム(SPEセパレーター)を用いたところ、45℃において安定的な充放電サイクル特性を示した。

②ポリマーゲル電解質は、ポリマー濃度10%まではゲル電解液化してもイオン伝導性の低下は殆どなく、ゲル電解液の温度依存性も殆どない。
 そこでLiB電解液をゲル状(半固体化)にして液漏れ、発火のリスクを低減しつつ、保液性改善等により電池寿命の増加や高い柔軟性等による電池の設計自由度の向上などの特徴を生かした半固体電池を山形大学、BIH社と共同開発している。セパレーター基材へのゲル化剤塗工試作品ではサイクル特性が改善し過放電処理による短絡、極端な劣化は無く抵抗上昇を低減させていた。そして大阪ソーダは今後も継続して先進LiBおよび全固体LiBの性能向上、長寿命化、安全性向上に貢献する材料を開発していきます。

2.「全樹脂電池の研究開発」
APB株式会社  代表取締役CEO Chief Architect  堀江 英明氏
<要旨>
 産業革命の発端となった内燃機関の発明は、自動車などあらゆる動力に応用され安価なパワーソースとなった。しかし現在では、化石原料による CO2 排出や更なる高効率の必要性より新たなパワーソースを求められていた。21 世紀に発明された高効率高性能なリチウム電池により内燃機関の電動機による代替えが可能になった。しかし、更なる普及には、短絡による発火の危険性および、その対策のための複雑な構造と高製造コストが課題である。該社は、その課題解決のため、大面積による通電を可能にするバイポーラス構造を持ち、集電体として金属を用いず、正極、負極、電解質、集電体すべてを樹脂化することを構想し、全樹脂電池で実現した。この結果、従来にない単純な構造による安全性の確保および、コンパクトな体積、製造コストの低減、形状の自由度の拡大が可能となった。現在、福井県武生に実証工場を建設し、生産を開始した。今後、更なる高性能電池の実用化と事業拡大を目指している。

3. 「最新の塗工乾燥装置 と これから目指すもの」
株式会社テクノスマート 技術統括部 研究開発部 部長  市川 太空美氏
<要旨>
 海外メーカーの短納期と低コスト、機械精度の向上によりリチウムイオンバッテリー電極設備に於ける日本塗工機メーカーの存在感は、縮小を余儀なくされつつある。これは機能性フィルムの世界でも起こりかねないことであり、これに対抗すべく近年新たに開発したテクノスマートの新技術とこれから目指すものを紹介する。

①TSBAR:タンデム設置にて両面コートも可能でバッテリーセパレーター向けに狙い塗布量wet5~10µm、塗布速度は100m/min以上。TSBAR表面は硬質被膜で耐摩耗性有り

②Automatic control:塗布直後のwet塗布厚みを幅方向、流れ方向に計測して、幅方向調整・多条塗布での幅寸法調整・基材に対する塗布位置調整・両面塗布での位置合わせ・間欠塗布での間欠長さ調整などを制御してロス改善

③TSGRAVURE:MLCCベースフィルムや光学用途の保護フィルムなど~300m/minの高速塗布にて干渉縞のない塗布外観を確保

④Frame coating:固体電池向けなどの枠形状パターンの塗布方式。最小塗布長は3㎜長

⑤Powder electrode:次世代電池としてのドライバッテリーの電極生産にも取り組み中

その他にも、高速間欠塗工での未塗工長の最小化、ストライプ塗布での絶縁材極細塗布を開発中。

そして、最適化されたダイのマニホールドをガラス製ダイヘッドでの粒子沈降確認やテクノスマートのオリジナル流体解析プログラムの改良を継続して追求していく。

第16回フィルム物性研究会(連携ラボ)

開催日 2023年5月25日(木)
会場 (地独)東京都立産業技術研究センター5F会議室
参加者 31名
討議内容
  1. JIS K 7317普及状況の説明
  2. 東芝デジタルソリューションズ(株)「OneShotBRDF 光学検査技術」の紹介と質疑応答
  3. JIS K 7317の普及と新たな指標表記について(討議)
  4. <まとめ>
    マーケッティング調査として会員企業のフィルム製品の表面硬さ(鉛筆硬度)の調査と同時に、試料を入手して、JIS K 7317と鉛筆硬度との比較試験を行うとともに、当面ニーズのある表面硬さについて調査とともにヒアリングを進める。

第17回フィルム物性研究会(連携ラボ)