1. 特別講演 「プラスチック製品製造業における人手不足と特定技能・技能実習制度の現状」 経済産業省 製造産業局 素材産業課 課長補佐(有機化学) 岸田 学氏 経済産業省素材産業課は、金属以外の素材を扱い、業界団体との関係などでの業務を行っている部署である。プラスチック製品製造業における人手不足が深刻であり、ニーズも高いことから、この分野にも特定技能制度の対象拡大が2024年3月に閣議決定された。今回は、全産業、製造業またその中のプラスチック製造業における、就業動向として、全従業員数、高齢者就業者数、34歳以下の若年就業者数及び女性就業者数の各動向について説明があった。さらに、厚労省の調査による男女間の賃金格差についての説明では、世界的に見ても日本は格差が大きく、また全産業よりも製造業における格差が大きいとの説明があったが、プラスチック製造業では、全製造業よりは格差は小さいとのことである。正規雇用/非正規雇用の比率で、製造業では正規雇用の比率が高い状況で推移している。 中小企業における「産業別従業員数過不足DI(過剰割合―不足割合)」では、現在人手不足感が強くなっている。この中で、製造業における外国人労働者数は、コロナ禍を除いて増加傾向であり、2014年27.3万人に対し2023年は55.2万人となっている。(2023年在留外国人数は341万人強、在留外国人労働者数204万人強) プラスチック製品製造業での人手不足の事例として、外国人労働者の熟練や指導への意欲が増加している一方で、日本人熟練工の退職などで、品質トラブルへの対応力が落ちているなどの紹介もあった。外国人への「技能実習制度」(技術を身について自国の発展に寄与する目的での採用。プラスチック成型方法の一部が対象職種)と「特定技能制度」(国内人材確保が難しい場合で、一定の専門性・技能を持つ外国人採用)との違いの説明とともに、後者の制度が2024年3月にプラスチック製造業にも対象が拡大されたとの説明があった。なお、会員からの要望として、「技能実習」対象の中で、インフレーションフィルムが対象でTダイ法フィルム・シートが対象外となっている中で、対象となるよう見直しを要望することについては、「技能実習」の対象職種を選定してきた経緯(業界団体、海外からの要望など)があるためとし、今後関連する業界団体からの要望の状況を踏まえて必要に応じて検討するとの回答があった。 以上
2. 講演 「スペクトル超解像によるX線光電子分光測定の高速化」 東海国立大学機構 名古屋大学 未来材料・システム研究所附属未来エレクトロニクス集積研究センター 准教授 / SSR株式会社 取締役CTO 原田 俊太氏 https://spectralsr.com/ 今回の発表は、フィルムの研究開発、評価に利用される分光分析において応用される「スペクトル超解像度」の利用について紹介があった。未来エレクトロニクス集積研究センターは、青色発光ダイオードでノーベル賞を取られた天野 浩教授がセンター長でおられ、主にGaNやSiCなどを利用した先進パワーデバイス、システム、パッケージに関する研究をおこなっており、原田氏は結晶欠陥などの測定において分光計測にインフォマティクス(情報学)を応用すること、また他の産業での活用可否なども検討している。また、AIの普及促進のために「(一社)製造業AI普及協会」を立ち上げ、製造業へのインフォマティクス応用についての普及活動も行っている。 今回は、分光データを「スペクトル超解像技術」を利用してよく見えるようにすること、また関連した製造プロセスでの機械学習制御として、結晶成長操作の自動制御に於いて、強化学習のアルゴリズムの開発と応用についての紹介があった。事例として、画像超解像では、少ない画像データから、妥当なデータの推定で再構築する技術(よく見えるようにする技術)があり、分光測定の時間短縮や測定データのS/N比(ノイズ)を低減することが可能となることがわかってきているとのこと。また顧客が測定したデータを解析できるソフトを開発されたとのことである。ベイズ超解像度アルゴリズムの特徴及びラマン分光分析への応用、さらにXPS(X線光電子分光分析)への応用についての説明がされた。これらに取り組んだ理由として、結晶欠陥の測定に於いて、ラマンピーク位置の変化(0.02~0.03cm-1)を詳細に測定し、そのコントラスが分ることから欠陥を見つけ出すことができるが、その精度を知るためにインフォマティクスによる複数の画像から解像度を上げるアルゴリズム(ベイズ超解像:ベイズ推定=事前の知識を利用して推定する)があることを見出し応用したとのこと。なお、超解像は、分解能や解像度を上げることではなく、データの間隔を細かく、特徴を見出すこととのこと。具体的な実験例として、ラマンスペクトル測定で測定したSi基板の測定データについて、実際の実験データに対して超解像して、連続的な再構築データが示された。さらに用途応用として、FTIR、EELS(化学分析および組成分析用電子エネルギー損失分光法)などがあるとの説明があった。特にXPS測定における測定時間の短縮に有効であるとのことである。以上
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