2024年度 第23回定期総会&6月例会

参加者 138名(現地参加:87名(講師含む)、オンラインライブ参加:40名、録画視聴:11名)
技術交流会参加者:70名
開催日 2024年6月18日(火)
会場 タワーホール船堀5F 小ホール
定期総会 1. 2024年度第23回定期総会
<議案審議>
1)1号議案 2023年度(2023年4月1日~2024年3月31日)事業報告
2)2号議案 2023年度事業収支報告、審議
3)3号議案 2024年度下記事業計画に関する審議
 ① 活動方針(年次テーマ、重点課題)
 ➁ 活動計画
 ③ 運営予算
4)4号議案 2024年度役員選任(会長、副会長、理事)に関する審議
5)5号議案 会則改定に関する審議
 ① 海外法人会員区分の廃止と法人会員としての会費改定の件
 ➁ 賛助会員の定義の明確化
上記議案のすべてにおいて、会則第9条2)に従い承認されました。
メンバーズ・インサイト 1. アイカ工業株式会社
2. サイデン化学株式会社
3. 東山フィルム株式会社
講演

1. 特別講演 「プラスチック製品製造業における人手不足と特定技能・技能実習制度の現状」
経済産業省 製造産業局 素材産業課 課長補佐(有機化学) 岸田 学氏 
 経済産業省素材産業課は、金属以外の素材を扱い、業界団体との関係などでの業務を行っている部署である。プラスチック製品製造業における人手不足が深刻であり、ニーズも高いことから、この分野にも特定技能制度の対象拡大が2024年3月に閣議決定された。今回は、全産業、製造業またその中のプラスチック製造業における、就業動向として、全従業員数、高齢者就業者数、34歳以下の若年就業者数及び女性就業者数の各動向について説明があった。さらに、厚労省の調査による男女間の賃金格差についての説明では、世界的に見ても日本は格差が大きく、また全産業よりも製造業における格差が大きいとの説明があったが、プラスチック製造業では、全製造業よりは格差は小さいとのことである。正規雇用/非正規雇用の比率で、製造業では正規雇用の比率が高い状況で推移している。
 中小企業における「産業別従業員数過不足DI(過剰割合―不足割合)」では、現在人手不足感が強くなっている。この中で、製造業における外国人労働者数は、コロナ禍を除いて増加傾向であり、2014年27.3万人に対し2023年は55.2万人となっている。(2023年在留外国人数は341万人強、在留外国人労働者数204万人強)
 プラスチック製品製造業での人手不足の事例として、外国人労働者の熟練や指導への意欲が増加している一方で、日本人熟練工の退職などで、品質トラブルへの対応力が落ちているなどの紹介もあった。外国人への「技能実習制度」(技術を身について自国の発展に寄与する目的での採用。プラスチック成型方法の一部が対象職種)と「特定技能制度」(国内人材確保が難しい場合で、一定の専門性・技能を持つ外国人採用)との違いの説明とともに、後者の制度が2024年3月にプラスチック製造業にも対象が拡大されたとの説明があった。なお、会員からの要望として、「技能実習」対象の中で、インフレーションフィルムが対象でTダイ法フィルム・シートが対象外となっている中で、対象となるよう見直しを要望することについては、「技能実習」の対象職種を選定してきた経緯(業界団体、海外からの要望など)があるためとし、今後関連する業界団体からの要望の状況を踏まえて必要に応じて検討するとの回答があった。
以上

2. 講演 「スペクトル超解像によるX線光電子分光測定の高速化」
東海国立大学機構 名古屋大学
未来材料・システム研究所附属未来エレクトロニクス集積研究センター 准教授
/ SSR株式会社 取締役CTO 原田 俊太氏  
https://spectralsr.com/
 今回の発表は、フィルムの研究開発、評価に利用される分光分析において応用される「スペクトル超解像度」の利用について紹介があった。未来エレクトロニクス集積研究センターは、青色発光ダイオードでノーベル賞を取られた天野 浩教授がセンター長でおられ、主にGaNやSiCなどを利用した先進パワーデバイス、システム、パッケージに関する研究をおこなっており、原田氏は結晶欠陥などの測定において分光計測にインフォマティクス(情報学)を応用すること、また他の産業での活用可否なども検討している。また、AIの普及促進のために「(一社)製造業AI普及協会」を立ち上げ、製造業へのインフォマティクス応用についての普及活動も行っている。
 今回は、分光データを「スペクトル超解像技術」を利用してよく見えるようにすること、また関連した製造プロセスでの機械学習制御として、結晶成長操作の自動制御に於いて、強化学習のアルゴリズムの開発と応用についての紹介があった。事例として、画像超解像では、少ない画像データから、妥当なデータの推定で再構築する技術(よく見えるようにする技術)があり、分光測定の時間短縮や測定データのS/N比(ノイズ)を低減することが可能となることがわかってきているとのこと。また顧客が測定したデータを解析できるソフトを開発されたとのことである。ベイズ超解像度アルゴリズムの特徴及びラマン分光分析への応用、さらにXPS(X線光電子分光分析)への応用についての説明がされた。これらに取り組んだ理由として、結晶欠陥の測定に於いて、ラマンピーク位置の変化(0.02~0.03cm-1)を詳細に測定し、そのコントラスが分ることから欠陥を見つけ出すことができるが、その精度を知るためにインフォマティクスによる複数の画像から解像度を上げるアルゴリズム(ベイズ超解像:ベイズ推定=事前の知識を利用して推定する)があることを見出し応用したとのこと。なお、超解像は、分解能や解像度を上げることではなく、データの間隔を細かく、特徴を見出すこととのこと。具体的な実験例として、ラマンスペクトル測定で測定したSi基板の測定データについて、実際の実験データに対して超解像して、連続的な再構築データが示された。さらに用途応用として、FTIR、EELS(化学分析および組成分析用電子エネルギー損失分光法)などがあるとの説明があった。特にXPS測定における測定時間の短縮に有効であるとのことである。以上

2024年度4月例会

参加者

142名(現地(講師含む):74名、Web配信:57名、録画視聴:11名)
技術交流会参加申込者(61名)

開催日 2024年4月18日(水)
会場 タワーホール船堀5F 小ホール
講演
  1. 「変わる勇気と変える力で、廃棄物から再生資源物へ」
    株式会社アールプラスジャパン 代表取締役 横井 恒彦氏 
     米国アネロテック社では、使用済MIXプラからBTX(ベンゼン・トルエン・キシレン)だけでなくオレフィンの生成に成功している。これを事業化するために、コストのみならずサプライチェーン全体で連携しケミカルリサイクル技術開発支援をし、排出プラの再資源化への仕組みづくりに国内約40社が参画連携し、アールプラスジャパンが設立されている。
     同社のビジネスモデルは米国アネロテック社の技術で国内商業プラントを事業化し、そのロイヤリティーはアネロテック社に配当される。またアールプラスジャパン参画企業には一部の配当と各種再生材のオフテイク権の獲得や企業価値向上というメリットがある。
     アネロテック社の再生技術は、MIX廃プラを選別処理後に破砕・脱ハロゲン処理し、500℃での熱分解と触媒分解によりエチレン・プロピレン・BTXなどの基礎化学品への変換を可能とする。これにより菓子類などの食品軟包材や紙PAC、工業用機能性フィルムなどの複合積層フィルムでも500℃程度で分解できる炭素系有機化合物であれば再生可能であり、油化~クラッキング工程が不要であるためCO2削減効果もある。この機構は装置の強度制約を受けないためユニットの大型化が可能でありスケールメリットを生かしコスト低減や環境寄与度も大きく出来る。なお、触媒の選定により希望する再生基礎化学品の比率を変更可能とのこと。この再生技術をもってMIX廃プラをサーマル利用からケミカルリサイクルにするこで付加価値をアップさせサーキュラーエコノミーを後押しできる。2030年以降にプラント稼働を目標にしており、アールプラスジャパンはボトルtoボトルから新たなプラtoプラの循環社会を目指していくとの説明があった。
  2. 「変わる勇気と変える力で、廃棄物から再生資源物へ」
    株式会社パックエール 代表取締役 内村 元一氏
     SDGs が広く浸透してきた社会において、包装は大きな転換期を迎えており、世界各国の政府そして企業では「サーキュラーエコノミー」の考え方に基づいた法整備や取組みが進んできている。具体的には、包装設計、ラベル表示、法規制の3点で説明された。包装設計の指針として 世界包装機構(WPO)が提示した「PACKAGING DESIGN FOR RECYCLING」(日本語訳:リサイクルのための包装設計ガイドライン)は、今後のリサイクルに向けた考え方の基本を示している。ラベルは、国内では、リサイクル方法を表示しているわけではなく、構成される原料の50%以上のものを示すのみである。しかし、アメリカ、オーストラリアは、リサイクル方法を表示するラベルになっている。ヨーロッパでは、リサイクル材料の食品包装への展開を促進するための法規制の強化が進んでいる。加えて リサイクルするための紙化促進の利点とそれを具現化する課題なども説明された。これらは、包装材のSGDS対応が大きな変化点を迎え、より永続的な対策へ向かう流れになったことを示唆する講演であった。
    以上