今年度に行った例会等の活動内容をご報告いたします。

前年度までの活動は、年度別活動概要からご確認いただけます。

2023年度第22回定期総会&6月例会

参加者 144名(現地参加:64名、Web配信:66名、ビデオ配信:14名)、技術交流会参加者:47名
開催日 2023年6月7日(水)
会場 タワーホール船堀 小ホール 
第22回定期総会

以下の議案についてすべて承認されました。
1) 1 号議案 2022年度(2022 年 4 月 1 日〜2023 年 3 月 31 日)事業報告
2) 2 号議案 2022 年度事業収支報告、審議
3) 3 号議案 2023 年度下記事業計画に関する審議
① 活動方針(年次テーマ、重点課題) ② 活動計画 ③ 運営予算
4) 4 号議案 会則改定に関する審議

講演

「実験室のデジタル化:その現状と展望」
東京大学 大学院理学系研究科化学専攻 教授/ 東京工業大学 物質理工学院 特任教授 一杉 太郎 氏
<要旨>
マテリアル研究開発の進め方に大きな変革が起きている。機械学習とロボット技術の発展により、コンピュータが状況を判断し、次の実験を決定する『自律化』が可能となってきた。
本講演では、『自律化』と『データ』を活用したマテリアル研究のあり方を議論した。研究者・技術者が五感で得た経験、勘、コツを機械に学習させ、実験をロボットに任すことにより、マテリアル探索範囲を飛躍的に広げることができる。さらに、そのようにして得た膨大なデータを研究者が知識として共有し、そこから新しい発想を生んで創造的な仕事に取り組む将来像が提案された。全体をシステムとして捉えるためのチーム作りも重要で、複数社との取組事例を説明した。
DXがなかなか進まない機能性フィルム業界について、課題設定の仕方や成功事例を作るコツについてのアドバイスがあった。自身の研究ラボの見学会を随時開催しているので、一事例として、より多くの企業に見学いただきたいと紹介された。

 

 


4月例会

参加者 167名(現地参加:63名、Web配信:88名、ビデオ配信:16名)、技術交流会参加者:43名
開催日 2023年4月13日(木)
会場 タワーホール船堀 小ホール 
講演

1.「当社のポリエーテル系素材と電池用高機能性フィルムへの応用開発と半固体電池への展開」
株式会社 大阪ソーダ  事業開発本部 イノベーションセンター  主席 松尾 孝氏
<要旨>
 基礎化学品から機能化学品、さらにヘルスケア分野へ事業領域を拡大し、そこで培われた特殊ゴム事業のポリマー設計技術と重合技術をもとに電池用途の「Si系材料への適用を目指した水系バインダー」や「イオン伝導性ポリマー」の開発に取り組んでいる。

イオン伝導性ポリマーは熱やUVによる架橋が可能であり、機械的特性が良く薄膜やゲルが容易に作成でき、汎用溶媒にも可溶なため加工特性も良い。

これらの電池部材活用例として、①Li塩混合し架橋した固体ポリマー電解質(SPE)、②Li電解液混合し架橋したポリマーゲル電解質がある。

①固体ポリマー電解質(SPE)はイオン伝導性ポリマーの特徴を生かしつつ架橋することでフィルム化することも可能で強靭性、柔軟性の制御が可能であり、電池の膨張収縮に追随もできる。実際に作成したポリマー電池に固体電解質フィルム(SPEセパレーター)を用いたところ、45℃において安定的な充放電サイクル特性を示した。

②ポリマーゲル電解質は、ポリマー濃度10%まではゲル電解液化してもイオン伝導性の低下は殆どなく、ゲル電解液の温度依存性も殆どない。

そこでLiB電解液をゲル状(半固体化)にして液漏れ、発火のリスクを低減しつつ、保液性改善等により電池寿命の増加や高い柔軟性等による電池の設計自由度の向上などの特徴を生かした半固体電池を山形大学、BIH社と共同開発している。セパレーター基材へのゲル化剤塗工試作品ではサイクル特性が改善し過放電処理による短絡、極端な劣化は無く抵抗上昇を低減させていた。そして大阪ソーダは今後も継続して先進LiBおよび全固体LiBの性能向上、長寿命化、安全性向上に貢献する材料を開発していきます。

2.「全樹脂電池の研究開発」
APB株式会社  代表取締役CEO Chief Architect  堀江 英明氏
<要旨>
 産業革命の発端となった内燃機関の発明は、自動車などあらゆる動力に応用され安価なパワーソースとなった。しかし現在では、化石原料による CO2 排出や更なる高効率の必要性より新たなパワーソースを求められていた。21 世紀に発明された高効率高性能なリチウム電池により内燃機関の電動機による代替えが可能になった。しかし、更なる普及には、短絡による発火の危険性および、その対策のための複雑な構造と高製造コストが課題である。該社は、その課題解決のため、大面積による通電を可能にするバイポーラス構造を持ち、集電体として金属を用いず、正極、負極、電解質、集電体すべてを樹脂化することを構想し、全樹脂電池で実現した。この結果、従来にない単純な構造による安全性の確保および、コンパクトな体積、製造コストの低減、形状の自由度の拡大が可能となった。現在、福井県武生に実証工場を建設し、生産を開始した。今後、更なる高性能電池の実用化と事業拡大を目指している。

3. 「最新の塗工乾燥装置 と これから目指すもの」
株式会社テクノスマート 技術統括部 研究開発部 部長  市川 太空美氏
<要旨>
 海外メーカーの短納期と低コスト、機械精度の向上によりリチウムイオンバッテリー電極設備に於ける日本塗工機メーカーの存在感は、縮小を余儀なくされつつある。これは機能性フィルムの世界でも起こりかねないことであり、これに対抗すべく近年新たに開発したテクノスマートの新技術とこれから目指すものを紹介する。

①TSBAR:タンデム設置にて両面コートも可能でバッテリーセパレーター向けに狙い塗布量wet5~10µm、塗布速度は100m/min以上。TSBAR表面は硬質被膜で耐摩耗性有り

②Automatic control:塗布直後のwet塗布厚みを幅方向、流れ方向に計測して、幅方向調整・多条塗布での幅寸法調整・基材に対する塗布位置調整・両面塗布での位置合わせ・間欠塗布での間欠長さ調整などを制御してロス改善

③TSGRAVURE:MLCCベースフィルムや光学用途の保護フィルムなど~300m/minの高速塗布にて干渉縞のない塗布外観を確保

④Frame coating:固体電池向けなどの枠形状パターンの塗布方式。最小塗布長は3㎜長

⑤Powder electrode:次世代電池としてのドライバッテリーの電極生産にも取り組み中

その他にも、高速間欠塗工での未塗工長の最小化、ストライプ塗布での絶縁材極細塗布を開発中。

そして、最適化されたダイのマニホールドをガラス製ダイヘッドでの粒子沈降確認やテクノスマートのオリジナル流体解析プログラムの改良を継続して追求していく。