活動報告

4月例会

参加者 のべ193名(会場:33名、ライブ視聴:129名、ビデオ視聴:31名)
日時 2021年4月13日(火)
場所 機械振興会館B2階ホール
講演

①「SDGsに貢献 世界初のリサイクルガラス繊維混練技術と製品の展開」
 ナノダックス㈱ 取締役社長 佐藤 勲昌 氏
SDGsへの世間的関心が高まりつつ有る中、サスティナブルな社会に向け『世界初のリサイクルガラス繊維混錬技術』の特許を活かした製品展開の紹介。ガラスファイバーの様なバージン材ではなく、廃棄される【グラスウール】をさらに活用したアップサイクル技術と製品で、強化フィラーとしての活用や耐熱・低収縮・ソリ抑制・極薄化・成形性の良さなどの特徴を持った素材となる。独自製品としてグラスウールの特徴をいかした、3Dプリンター素材や樹脂成形機洗浄剤なども製品化されている。今までにないグラスウール入り樹脂やフィルムへの可能性等、世界にないモノを造るというミッションを遂行すべく取り組んでいる。

 ②「スマートウィンドウ向け透明導電性フィルムの高機能化検討 ~ 耐久性向上検討~」
 東洋紡㈱ 総合研究所 堅田フィルム技術センター 第5グループリーダー 多々見 央 氏
 窓を透明や不透明に切替える事が出来るスマートウィンドウには、透明導電膜としてITO(スズ ドープ酸化インジウム)がプラスチックフィルムに成膜された透明導電性フィルムが使用されている。プラスチックフィルムに成膜されたITO膜には、高温高湿下での抵抗値の不安定性や、フレキシブル性と物理的耐久性の両立が困難なことなど多々課題がある。そのITO膜の界面、ITO膜の構造などに着目し課題解決の方策について解説。現在用途に合わせ最適な4種類のITO膜と、さまざまな性能をもつHCフィルムとの組み合わせで、『 スマートシティを支える新機能材料技術 』として展開している。

③「革新的高分子設計による史上最高耐熱プラスチックフィルムの開発」
 北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 環境・エネルギー領域 領域長/教授 金子 達雄 氏
放線菌由来の芳香族オルトジアミンの開発に成功し、世界最高耐熱のバイオプラスチック(バイオポリベンズイミダゾール(PBI)の共重合)を開発した。PBIはベンゼン環と擬芳香族性ヘテロ環の繰り返し構造を持ち、かつ強い分子鎖間水素結合を示すため最高級の熱分解温度を示す。DFT計算を用いた水素結合力を制御する新規分子設計法を発見し、PBIに少量のアラミドを共重合することにより、それぞれの単独重合体よりも高い熱分解温度を示すことが見い出され、結果として745℃の史上最高耐熱のプラスチックフィルムを得るに至った。将来的には高耐熱性が要求される次世代の高出力モーターやガスタービンへの用途展開が期待される。

第13回フィルム物性研究会(連携ラボ)

日時 2021年5月18日(火)
開催形式 Zoomミーティング
参加者:52名(講師2名含む)
テーマ 「高機能フィルムの機能評価のデジタル化手法とフィルム及びフィルム製品の機械的劣化の予知、予測などへの応用」

第20回年次総会&6月例会

参加者 のべ173名(会場:30名、Webライブ視聴:116名、ビデオ視聴:25名(講師含む))
日時 2021年6月15日(火)
場所 機械振興会館B2階ホール
総会 以下の議案についてすべて承認されました。
1)1号議案 2020年度(2020年4月1日〜2021年3月31日)事業報告
2)2号議案 2020年度事業収支報告、審議
3)3号議案 2021年度事業計画(活動方針、活動計画及び運営予算)に関する審議
4)4号議案 2021年度役員委嘱(運営委員1名新任、監査役1名新任、相談役留任)に関する審議
5)5号議案「会則」改定に関する審議
講演 「常温セラミックスコーティング、AD 法の成膜メカニズムとフィルム 製品への展開」
 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 エレクトロニクス・製造領域 先進コーティング技術研究センター センター長 明渡 純 氏
講演要旨:
セラミックスによるコーティングは航空機や自動車、電子部品から再生医療分野まで活用されている。従来のセラミックスには高熱が必要であるが、AD法では室温環境下で1〜100μmといった厚さ領域に緻密なまたはポーラス状のセラミックスコーティングが可能である。緻密な膜の実用例として従来より微細加工が求められる最先端の半導体製造装置内の低発塵耐プラズマコーティングとしてイットリアAD膜が、ポーラス状の膜としてはフレキシブル色素増感型太陽電池の電極としてのTiO2膜が紹介された。AD法は粒子の大きさが重要で、サブミクロンサイズでも減圧下だとセラミックス微粒子が基材にあたる衝撃で金属様に塑性的に破砕すること、常温でも、その破砕直後の面同士が再結合することで成膜できる理論(常温衝撃固化現象)が紹介された。最新の研究ではポーラス状のAD膜にクロルヘキシジン(CHX)を担持させウィルスを不活性化させるコーティングに活用されるなど、新たな用途展開が進められている。

9月例会

参加者 のべ208名(現地参加:39名、Webライブ視聴:131名、ビデオ視聴:38名)
日時 2021年9月15日(水)
場所 タワーホール船堀 小ホール
講演

①「プラスチックスデザイナーが考える 『サステナビリティでカーボンフリーなモノづくり』『環境とプラスチックス」
㈱H&A designers 代表取締役 鈴木 英夫 氏
プラスチック製品の意匠に長年携わってきた者として、環境とプラスチックスを考慮したサステナビリティでカーボンフリーなモノづくりについて解説している。まず演者はプラスチックと環境を考えるにあたり、さらなるプラスチックスに関する教育の必要性を訴えている。次にカーボンニュートラルで環境汚染のないバイオプラスチック(バイオマス、生分解)について解説し、まだまだ発展途上であるため、環境を考慮したプラスチックス製品デザインとしてリサイクルとリユースについて解説している。現在プラスチックス廃棄物の25%がリサイクル、57%が熱回収、未処理が18%となっており熱回収、未処理が大きな問題である。リユースに関しては、単一素材化、多層の場合は使用後剥離しやすい構成などの設計が重要となる。演者はリサイクルよりリユースを推奨している。リユースの例とし瓶入り牛乳の宅配サービスシステムに似たLoopの取組みや、マイボトルで人気のあるサーモスの例を挙げ、「かっこいい~」が重要な価値になるとのことである。プラスチックスはどちらかと言うとガラスの代替のような位置づけで扱われることが多いが、代替品ではなく新製品として機能と価値を高めて何度も使える、使いたくなるようにすべきである。

②「東レのフィルム事業におけるイノベーションの源泉と新たな取り組みについて」
東レ㈱ フィルム事業本部 工業材料事業部門 主幹 渡辺 恒太 氏
冒頭、東レ㈱会社紹介とともに、2019年滋賀事業所内に完成し、当研究会の夏季特別研修候補地であった「未来創造研究センター」の紹介があった。事業領域は繊維、機能化成品、炭素繊維、環境エンジニアリング、ライフサイエンスなど多岐に渡っていることが紹介され、「新しい価値を通じて社会に貢献する」という企業理念に基づいた事業展開がされていることが理解出来た。また、フィルム事業では生産を始め研究開発でもグローバル展開が図られ、主力のポリエステルフィルム事業では年産40万トンと世界一の生産量を誇るとのこと。要素技術に裏打ちされ、企業でも余裕がないと出来ないフィルムの極限特性までも追求することで新たなニーズを生み出し、オンリーワンの用途展開をも図られている。ナノサイズまでの微細構造を取り入れた様々なナノアロイ技術を応用し、データストレージ用途への展開や省エネ、拡張現実、バッテリーセパレーター用途などや、高い耐熱性を得るための新たなポリマー設計による新規ポリマーフィルムにより情報通信分野への展開を図っているが、一方で循環型社会の構築に向けた取り組みとして、工程中に利用される高機能なフィルムや廃棄されるフィルムの使用量は非常に多く、このリサイクル市場も拡大しており新たな市場として着目しているとのことである。新たな製品を生み出す土壌が整っているという印象を受けた。

③「銀座の流儀」
白坂 亜紀 氏
日本の景気を映すと言われる夜の銀座で35年仕事をされてきた白坂さん。バブルの時代から、崩壊、そしてリーマンショック。東日本大震災、コロナ禍と経験されてきました。その間、最大3000店あったクラブも300店程になってしまったとのことです。銀座で働くホステスさんの大変な一日、コミュニケーション能力を磨き、常に顧客にサプライズを与えることを続けないと戦力外通告になってしまう厳しい側面もお話いただきました。また、最近の若い人の教育も絶対に叱ってはいけない。褒めるときは具体的にといわれました。銀座で、喜ばれるお客さんは粋で瘦せ我慢のできる人。そういう人は出世もされるようです。その他、銀座のビルの屋上で養蜂をおこなうミツバチプロジェクト、屋上緑化を推進し銀座里山計画など、昼間も活躍されていらっしゃいます。

10月特別例会

参加者 のべ205名(現地参加:25名、Webライブ視聴:150名、ビデオ視聴:30名
日時 2021年10月13日(水)
場所 機械振興会館 B2階ホール
講演

①「バイオマスエネルギー導入拡大への道」
一般社団法人日本有機資源協会(JORA)専務理事 柚山 義人 氏
今回のご講演では、特に農林業、畜産業から排出されるバイオマス原料の種類、その原料をエネルギー変換して電気、熱などを取り出すための技術、取り出したエネルギーの貯蔵、輸送方法の重要性に関して、事例を含めてわかりやすく説明された。また、バイオマス産業を軸として、環境にやさしく、災害に強いまちとしてのバイオマス産業都市に関して、バイオマス原料生産から収集、輸送、エネルギー変換とその生成物の貯蔵、輸送及び利用を一貫して行うための構想策定から事業運営に至るPDCAマネジメント、必ず起こるトラブルの未然防止のための社会実験の重要性が強調された。脱炭素社会に貢献するバイオマス活用については、創エネ、化石資源の代替となる資材の生産、二酸化炭素吸収と炭素貯留に分類された。その他、JORAとしての人材育成、研修など積極的に行われている活動についての紹介もあった。機能性フィルム研究会会員へ問いかけられた、機能性フィルムの生産に必要な原料をバイオマスに置き換えられますか?機能性フィルムの生産に必要なエネルギー(電気、熱など)をバイオマス由来または他の再エネに置き換えられますか?へ答えを出し、RE100企業となり、脱炭素やSDGsへの貢献へ道筋がつけれることを期待したい。

②「バイオマスプラスチック及びバイオマス製品の利用推進の取組」
一般社団法人日本有機資源協会(JORA)理事・事務局長 嶋本 浩治 氏
冒頭に(一社)日本有機資源協会(JORA)の取組内容について説明があり、バイオマス事業推進に付随して、バイオマスが含まれる商品を認定するバイオマスマークについての紹介があった。またバイオプラスチックの分類としては、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックがあるが、前者は再生可能な有機質資源を含み、その重量比率によりバイオマス度が決まり、後者では機能としての生分解性であり、石油由来の原料から作られても生分解性機能を持っているプラスチックはバイオプラスチックに分類されるとの説明があった。最近では、バイオマス成分が実際に入っているバイオマスプラスチックの他に、プラスチック製造時に投入したバイオマス量を割り当てるというマスバランスアプローチによる製品が日本でも増えてくるとのことである。さらにバイオプラスチックの導入促進、プラスチック資源循環促進に関する法律、プラスチック使用製品設計指針など関係省庁でのシナリオなどについて紹介があった。2050年にはバイオマスプラスチックを250万トン程度導入する目標を描いており、それまでの過渡期はマスバランスによる導入促進が図られることになるとのこと。なお、各企業での説明会など必要に応じて対応いただけるとのことから、会員で必要な場合には直接JORAのホームページまたは今回の講師の方々へ問い合わせをしてほしいとのことであった。

③「カーボンリサイクル実現の基盤となるバイオプロセス生産技術開発の取り組み」
NEDOスマートセルプロジェクト プロジェクトリーダー 農学博士 九州大学 名誉教授 久原 哲 氏
バイオエコノミーの急激な進展とその政策が各国で推進されている現状とともに、ESG投資など環境に如何に配慮した生産システムを取り入れていくことの重要性について冒頭説明があった。また政府が打ち出した2050年までにカーボンニュートラル達成に向けた技術開発の必要性から、五つのアクションプランの紹介とともに、原材料の非化石化やCO2を削減した生産性が求められることにより、NEDOのスマートセルPJについて紹介があった。これは、非化石資源(原材料)を取り出すための生産効率を最大限にし、かつ環境負荷の少ない生産プロセス開発に微生物、植物などを利用するものであるが、ゲノム解読技術、そのピンポイントで行える編集技術とそれらを支えるIT、AI技術の向上により可能となっている。重要な点は、何を狙うか、そのターゲットを決めることであり、例えば機能性フィルムの場合、その原材料をバイオに変換する場合に効率よく、高い生産性で作り出すための微生物を設計するなどが考えられる。スマートセルとは、酵素や有機、無機触媒を利用したプロセスと同様であり、ゲノム編集した微生物を利用した生産システムであるという理解ができた。植物は微生物に比べ複雑であるとの説明もあった。なお、遺伝子の組み換えなどを行う場合、適切なBSL(バイオセーフティレベル)1の環境下で行われる必要があるとのことである。

11月関西共催例会

参加者 のべ119名(現地参加:30名、Webライブ視聴:70名、ビデオ視聴:19名)
日時 2021年11月5日(金)
場所 京都市産業技術研究所 9号館南棟
講演

①「セルロースナノファイバーによる微細発泡プラスチックの創製」
(地独)京都市産業技術研究所 高分子系チーム 主席研究員 伊藤 彰浩 氏
プラスチック発泡体は自動車や壁紙など様々なところで使用されている。発泡成形は、プラスチック材料中に微細な気泡を形成させて、軽量化や断熱性、絶縁性などの特性を向上させる一方で、機械特性や熱特性が低下する問題がある。この問題を解決するには、気泡構造の制御(微細化、均一化等)と気泡骨格の強化が必要で、木材から得られる世界最先端のバイオマス素材セルロースナノファイバー(CNF)を複合化したプラスチックを発泡させることによって前記問題が解決できる。CNF強化プラスチックの有する特徴的な流動特性を利用して微細な泡を持つ発泡体を作製することが出来、軽量性と高強度を両立することが可能となる。アセチル化CNF/PA6樹脂とこれと高い親和性を持つポリアミド系熱可塑性エラストマーを発泡射出成形することで、反発性を維持しつつ強度、耐久性を向上させた例と、CNF複合化と発泡によるPPの耐衝撃性の低下をフィルムインサート成形により改善することで、耐衝撃性と軽量性、低線熱膨張率を両立させた事例について紹介された。材料面、成形面の双方からのアプローチで問題点を解決されており、今後、スポーツ用途や車用途等で実用化が進められていくことを期待したい。

②「統計的な考え方とものづくり」
元ユニチカ㈱執行役員 技術開発本部長 兼 中央研究所長 松本 哲夫 氏
我々はものづくりにおいて、実験してデータをとって解析し、今後の進め方を判断することを日常的におこなっており、その中で固有技術が大切なことも知っている。しかし、得られたデータを本当の意味で客観的に扱っているだろうか。データは誤差を含んでおり、誤差への配慮が必要であることを感覚的にはわかっているが、自分の都合の良いように解釈していないだろうか? 結論に至るプロセスは本当の意味で、最短で最良であっただろうか? 講演を通して、我々自身にそう問いかけられたように思う。実験は、生じた問題を解決することを目的とし、消費者社会、企業組織、そして、技術者自身に対して、より良い結果をもたらすことを期待する。その分野の専門家である技術者は実験結果に予断を持っているが、この思い込みが強すぎると、結果を客観的に評価できず、実験事実から正しい結論を導き出せないおそれがある。過去の事例をあげて、データを客観的にみることの大切さと統計的手法を使って、うまく計画を組み立てることにより、実験数を削減できることについて紹介された。中でも上皿天秤を用いた実験で、単因子逐次実験と直交実験を比較すると直交実験の方が誤差分散を小さくできるという例が印象的であった。 統計的方法は、①適切な実験計画の立て方、②正しい統計解析の進め方、③統計的な判断基準・客観的な判断材料を提供してくれる。研究開発の早期完遂、生産現場の改善、分析業務の効率化などに役立てたい。

③「シート型センサシステムを活用したデジタル変革~脳や構造物計測システムの研究開発と社会実装~」
大阪大学 産業科学研究所 栄誉教授 関谷 毅 氏
本講演では、厚さ1μ、高い柔軟性、伸縮性を有する機能性有機材料を高度に集積化することで実現された世界最薄・最軽量の「シート型センサシステムの研究開発と社会実装」について紹介された。特に、柔軟性に富む有機周期回路を実現するPE(プリンタブルエレクトロニクス)技術と AI、IoT技術の融合、また揺らぎの世界で非常に重要と考えられている統計学に基づくものづくりを活用し実現された事例として、脳波計測及びコンクリート建造物の寿命計測などの開発事例など、関谷研究室で開発された材料・ナノテク科学について、様々なメーカーと連携し、大きな社会問題を解決するシステムについて紹介があった。脳波は認知症の早期発見、発達障害や更年期障害、てんかん治療に有効だが、日常的に可視化することはできていない。体温計や血圧計のように日常的に誰でも簡単に測定できれば、早期発見ができ、認知症患者の病気の進行を遅らせることができる。額に貼るだけで高精度に脳波計測可能な世界初の「医療用パッチ式脳波計」が開発され、安価で簡便であることから数多くの人を対象に利用出来、それらの膨大なデータを統計的に計測し、脳梗塞、認知症リスクなどを測る事が出来るものとの紹介があった。高度成長期に建設されたトンネルや橋などの構造物の中には、劣化したインフラが急増しているが、大掛かりで広大な面積に及ぶため劣化の判断が難しい。腐食の度合い、コンクリートのひび割れ、継ぎ手部の腐食、漏水など測定したい項目も多岐に及ぶ。これらの建造物に壁紙のように貼付け、センサ機能を有するインキを印刷した大面積シート型センサで鉄筋の腐食や振動などを測定し、集めたデータをAIで判定することで、常時監視が可能となり、余寿命の測定などを効率的に、また人手に関わらずに建造物の状態を測り、維持管理する「インフラ計測システム」が紹介された。なお、実装上の問題として、皮膚など様々な生体に適合し、0.1μVの低電位を測定を阻害せず、さらに再剥離できる接着(粘着)剤、またコンクリート建造物へ貼付するための耐候性が高く、耐塩水があり、バクテリアなどに食されない可塑剤フリーの機能性フィルム、さらに微少電流が測定できるような薄い接着層でも接着信頼性の高い接着剤など機能性フィルム研究会会員からの提案、紹介を期待しているとのことである。

2022年1月合同例会

参加者 のべ169名(Webライブ視聴:121名、ビデオ視聴:28名、展示会会場一般参加者:20名程度)
日時 2022年1月26日(水)
場所 新型コロナ感染防止の観点からオンラインでの開催としました
講演

①「環境と調和したセンサデバイスの実現に向けたセルロースナノファイバー応用」
大阪大学 産業科学研究所 自然材料機能化分野 博士後期課程/学振特別研究員(DC1) 春日 貴章 氏
生分解性を有するCNFペーパーを用いた「土に還るIoTデバイス」は、土中に埋めれば総体積の95%以上が分解し、一般的なプラスチックフィルムやセラミック、金属配線を使用したデバイスに比べ自然界への負荷は極めて少ない。これを湿度センサとして利用し、広域での天候モニタリングが求められる農業や林業、畜産業や、森林火災や降雨による土砂災害の現場など、人が入りにくい広い範囲の場所にセンサを配置するという使い方が想定される。CNFペーパーを基材としたセンサ回路の安全対策を検討する中でCNFをコーティングした回路は水没後24時間経過しても短絡せず、さらにCNFコーティングによる短絡抑制効果はコーティングが損傷した状態でも発揮され、24時間以上継続するということを発見した。吸水によりCNFが再分散するため、乾燥状態でコート層に亀裂が入ったとしても水に濡れることで上記のメカニズムが発揮される。基材、コート層ともにCNFを使用しているため生分解するため自然環境下で異物となって残ることもなく、先述の自然界に散布しても使用後は土に還る湿度センサの安全性の向上が実現する。

②「XR(VR/AR/MR)360°動画市場について」
㈱矢野経済研究所 ICT・金融ユニット コミュニケーションビジネスグループ 上級研究員 賀川 勝 氏
XR(VR、AR及びMRの総称)市場は着実な成長を遂げており、スタンドアローン型HMDであるOculusの「OculusGo」が世界的にヒットし、その上位モデル「OculusQuest」が6軸をサポートした結果、ハードウェア及びコンテンツ市場において更に裾野を広げる形となった。一方でGoogleのVRプラットフォーム「DayDream」が収束したのを皮切りにスマートフォンを活用したVRプラットフォームは終焉に向かう形となるなど、ハードウェアプラットフォームの安定化と市場拡大には暫く時間が掛かる見通しである。また、世界中を混乱に陥れたCOVID-19と米中摩擦はXR市場にも大きな影響を及ぼしており、既存の社会環境のあり方が問われる一方で、オンライン上でのサービスに注目が集まり、それに伴ってXRの需要も拡大し始めている。更に世界各国で5G(第5世代携帯電話サービス)の商用サービスが開始され、XRにおいてもコンテンツ配信やビジネス分野、中継、映像制作の場で活用される機会が急速に増加する見通しである。

③「未来から逆算で考える 製造業でのXR活用法」
㈱Psychic VR Lab 井倉 北斗 氏
新たな技術であるXR(VR/AR/MR)の市場は、今後爆発的に広がる市場である。しかしながら、まだ、市場開拓がはじまったばかりである。この技術に新たなアイデアを組み合わせて様々な分野に様々な使用方法が開拓されている。  該社では、このXRの様々なアイデアの実現を容易にする『STYLY』XRのクリエイティブプラットフォームを提供している。この『STYLY』とは、ウェブブラウザ上でプログラミングやVRなどの特別な知識なしに誰でもVR空間を作る事ができるクラウドサービスであり、講演では、実際にスマホアプリのダウンロードによる使用実体験も実施された。事例として スマホで見ると街並みに仮想のバルーンや広告など表示させる。製造機械、設置場所をVRにより再現し、パソコン上でシミレーションすることにより、製造機械の設置作業工数削減の実現や機械修理などのマニュアルとして機械内部構造を外観実像と合わせて表示することにより、短期で習得するなど、新たなツールとしての大きな可能性を示唆す説明があった。

矢野経シリーズ ㈱矢野経済研究所 インダストリアルテクノロジーユニット 内田 大駿氏
「高機能包装材料の需要動向」